夏目漱石をはじめ文豪たちにも愛された、伊豆を代表する温泉地のひとつ、修善寺温泉。
その中心部の温泉街から少し離れた静かな山の上に、50万坪もの広大なスケールで広がる老舗リゾートホテルが、ラフォーレ修善寺だ。
サイクリストの視点から見たラフォーレ修善寺の最大の特徴であり、魅力でもあるのは、あるいは、最寄りの国道(136号線、下田街道)からホテルへのアプローチルートの面白さかもしれない。
国道の交差点から、細長く広がるラフォーレ修善寺の一番奥に位置するゲストハウスまで、距離にして約4km。
平均斜度6%で標高差約250mを登るヒルクライムルートだ。ラフォーレ修善寺へ向かうなら、この坂道を通らないわけにはいかない。逆に言えば、ラフォーレ修善寺に用のない車はほとんど入ってこないので、交通量も少なく、絶好の練習コースにもなるだろう。
実際、毎年5月に行われる日本を代表するステージ制ロードレース大会「ツアー・オブ・ジャパン」の伊豆ステージ(旧修善寺ステージ)の際には、いくつものプロチームがここに宿泊し、また事前の合宿地としても訪れて、この「ラフォーレ修善寺ヒルクライム」とでもいうべき坂道を練習に使っているのだ。
まるでラルプ・デュエズの山頂ゴールを思わせるような、山を登った先に広がる一大リゾート地。
厳しい坂を登りきった後には、天候次第でとびきりのご褒美も待っている。
そう、それはここでしか見られない、近すぎず遠すぎず絶妙な距離で美しくそびえ立つ、霊峰富士の眺めだ。
修善寺近辺の宿で、他の建物や山に邪魔をされずに、宿の中からこれだけ大きな富士山の姿をしっかりと眺めることができるのは、このラフォーレ修善寺ぐらいなのではないだろうか。頑張って登る甲斐もあるというものだ。
広大な敷地にいくつもの宿泊棟が並び建つラフォーレ修善寺だが、サイクリストにぜひお薦めしたい「サイクリストウェルカム」な宿泊棟は、西側(途中の分かれ道を左)の奥に位置する、ゲストハウス、センターハウス、そしてコテージの三つだ。
まず、西側の最も奥、つまり最も高い所に建つのがゲストハウス棟。
こちらは、併設のゴルフコースとも繋がっていて、美しい緑の芝が窓の景色を彩る。
落ち着いたシックな内装のツインベッドの部屋が中心で、夫婦やカップルでの自転車旅に良いだろう。
ツインルームでも十分な広さがあり、貸し出されるサイクルスタンドを用いて、自転車をそのまま客室で保管することができる。
このゲストハウスの魅力は、やはり富士山の眺め。雲が邪魔をしなければ、部屋の大きな出窓から、絵画のように美しい富士山の姿を眺めることできるのだ。(部屋や季節によっては富士山の眺望がきかない場合もあるので事前に確認のこと。)
ゲストハウス内には、広々とした眺めのよいカフェラウンジもある。ライドの前後に一息つくのによいだろう。
続いて、特に4名から6名程度のグループでのツーリングにお薦めしたいのが、ゲストハウスより少し手前のセンターハウス棟。
センターハウスの客室は、大きなリビングに和室が二間付いてるので、家族や気のおけない仲間で、自転車談義に花を咲かせながら楽しい夜を過ごすには最適だ。南側に向いた部屋からの景色は、聖ラフォーレ教会堂や天城連山など、富士山側とはまた違った趣がある。
もちろん、サイクルスタンドを用いて客室への自転車持ち込みが可能だ。
さらに、7名以上のグループでのライドツアーなどで、皆で同じ部屋に泊まって親睦を深めたいという場合には、人数に応じていくつかの種類があるコテージが便利だ。
自転車というアクティビティは、走りながら会話を楽しむことにはあまり向いているとはいえない。だからこそ、自転車を降りた夜の部は、皆で一緒にワイワイやってライド仲間の絆を深めたいと思うのだ。
吹き抜けの高い天井と大きな窓が特徴のこちらの2階建てのコテージなら、最大10名まで宿泊することができる。
皆の自転車は1階部分にまとめれば邪魔にならないだろう。また、空間が分かれているため、早めに寝たい人の安眠の邪魔をせずに、深夜まで盛り上がることもできるなど、便利に使えそうだ。
センターハウスとゲストハウスのエントランス脇には、宿泊者が利用可能なホース付きの水道設備がある。雨上がりで激しく汚れた場合など、室内へ入れる前にタイヤ周りの汚れを洗い流しておきたい。
また、自転車の客室持ち込みの際に用いるスタンドや、汚れがひどい場合に下に敷くブルーシート、空気入れポンプ、そして自転車工具一式も、フロントに完備している。
1日のライド(そして最後のヒルクライム)の後は、温泉でゆっくりと疲れを癒したい。
ラフォーレ修善寺の温泉は、修善寺温泉を引き込んだ無色透明のアルカリ性単純泉。
敷地内に温泉は2箇所あるが、上記の客室に泊まるなら、気持ち良い露天風呂もついた、センターハウス別館の「森の湯」がオススメだ。
温泉でさっぱりと汗を流したら、1日走って汗にまみれたサイクルウェアを洗濯しておこう。
ゲストハウス内と、センターハウス別館の森の湯並びには、コイン式の全自動洗濯機が設置されている。ここで洗濯・脱水までして部屋干しにしておけば、翌朝にはきれいになって乾いたウェアをまた着ることができるのだ。
夕食の料理はプランによって様々だが、いずれも伊豆ならではの旬の食材を活かした料理を堪能すれば、仲間との会話も弾むことだろう。