「その料理を味わうためだけに、旅に出かける。」
そんな大人の旅の目的地でありたいと、arcana izuは言う。
そのコンセプトには、「あの店のあの料理」をめがけて喜んで長い距離を走るサイクリストの性向と、どこか通ずるところがありそうだ。
中伊豆・天城湯ヶ島の原生林の中に佇むarcana izuが提案するのは、いうなれば、「大自然を味わうことに徹する贅沢」。
建物は、都会的なセンスを感じさせながらも、華美さを極力削ぎ落としたデザイン。しかも、ゲートとレストラン以外にはパブリックスペースとなる建物を作らず、全てが林の中に自然な距離で配置されている。
全室スイートルームの客室も、あえて必要以上の設備や華美な装飾品を持たず、テレビも無い。
代わりにあるのは、目の前を流れる狩野川の清流と渓谷に広がる力強い原生林。
洗練されたシンプルな居室の中で川の瀬音と鳥のさえずりに包まれる、この環境こそが最高の贅沢だ、という思想がよく伝わる造りだ。
arcana izuにはロビーもフロントもなく、チェックイン・チェックアウトはそれぞれの客室で行うのだ。
二人で過ごすのにちょうどよい、十分な広さ。上質でありながら、主張しすぎ無いデザインと抑えた色調のインテリアが心地よい。
ウェルカムドリンクをいただきながら、窓の外の森を眺めてしばしくつろごう。
「大自然に包まれ、食を愉しむ。」
まさに、自然を愛する多くのサイクリストが殊に求めるところではないか。
ここ天城の周辺には、自転車で走るのに適した景色のよい道も多く、富士山と駿河湾を望む絶景ワインディングロードとして有名な「西伊豆スカイライン」へも程近い。
arcana izuが「サイクリストウェルカム」な宿となることも必然といえよう。
宿泊サイクリストの自転車は、専属のバトラーに預け、堅牢なゲートに設えられたバトラールームで大切に、安全に保管される。
arcana izuでの駐車はバレッドパーキングとなるため、車の中に自転車を積みっぱなしでは何かと不便だが、ここで預かってもらえれば安心・便利だ。もちろん、仏式対応の空気入れポンプも完備している。
起伏に富んだ伊豆の数々のワインディングロードに挑み、絶景に感動したライドの後は、肌に柔らかい天城湯ヶ島の温泉で至福のリラックスタイム。
arcana izuでは、すべての客室に、源泉かけ流しの温泉露天風呂が備え付けられている。
中でも、「The SUITE」の部屋付き露天風呂は、渓谷を見渡す広々としたテラスに、大人二人がゆったりと入れる大きな湯船。とびきりの開放感だ。24時間源泉かけ流しなので、いつでも、何度でも、脚を伸ばして温泉三昧だ。
デッキチェアに腰掛けて、ドラマティックな渓流と原生林の景色をぼーっと眺めながら、のんびりと足湯を楽しむのもいい。
arcana izuでは、温泉入浴の後、施術者を呼んで部屋の中で(あるいはテラスで)マッサージやスパトリートメントが受けられるメニューも用意されている。翌日のライドをより一層快適に楽しむために、筋肉に疲れを残さないボディケアは重要だ。
湯上りのまま外に出る必要もなく、川のせせらぎを聞きながら、プライベートな空間で受けるトリートメントは、うっとりするような時間となるに違いない。
自身の汗は風呂で流せても、汚れたサイクルウェアの処理は、自転車旅でいつも問題となる点だ。
しかしそこは、「サイクリストウェルカム」なarcana izu。サイクリスト向けのサービスとして、夕方までに担当バトラーにウェアを預けて洗濯を頼めば、洗濯・脱水後、自然乾燥したうえで翌朝に部屋へ返してくれるのだ。翌朝の早朝に使用を希望の場合には、洗濯・脱水までしたウェアをその日のうちに受け取り、部屋干しにすることもできる。
せっかくの美しく快適な部屋で、汗にまみれたウェアを放置することもなく、翌日もお気に入りのウェアを清潔な状態で着られる嬉しさは、サイクリスト独特のものだろう。しかも、自分の旅の時間を洗濯に費やす必要がないのだからありがたい。
さて、いよいよ、お楽しみのディナータイム。
arcana izuのレストランは、一言でいえば「劇場型レストラン」とでもいうべきか。他には無い、エモーショナルな食事体験を提供する空間だ。
まずは、映画館のスクリーンのような大きな窓いっぱいに広がる天城の大自然と、その中でも圧倒的な存在感を放つ樫の巨木に目を奪われる。
全長15mのカウンターに席をとれば、目の前で美しく盛り付けられていく料理を眺めながら、シェフとの会話を愉しむこともできる。
カウンター席の後方、通路を挟んで一段高くなった席は「オペラシート」と呼ばれ、レストラン全体の雰囲気を俯瞰して眺めたい方や、バトラーとの会話を愉しみたいリピーターに人気が高いとか。
地元のオーガニック農家や個性豊かな生産者らと強い関係を結び、地場産の季節野菜や日本一深い湾である駿河湾産の新鮮な魚介類を中心として、伊豆ならではの旬の食材を用意している。
宿名の由来となったラテン語の「arcana」=「神秘」からとられたグランドメニュー「神秘」。まずは、まるで伊豆・静岡を旅した気分にさせてくれるタパスがお出迎え。
一皿一皿、美味しさの上にちょっとしたサプライズが加えられ、それがますます食事を楽しくするのだ。あらためて、料理は人を楽しませるエンターテインメントなのだと気づかされる。
グランドメニューの内容は、四季の移ろいを存分に感じられるよう、季節に応じて随時変わってゆく。例えば、過去に供されてきた料理をいくつか紹介しよう。
まずは、金目鯛とズッキーニ・ラビオリ・ベルリンゴ。
つぎに、釣り鯵・ポワブロン・ルージュ。
さらに、鮎のナージュ。
グランドメニューの他、その時期に旬を迎えている食材を、オプションで加えることもできる。
例えば、毎年10月後半から3月ぐらいまでは、チョウザメを仕入れてシェフ自らがさばいて卵を取り出し、自家製キャビアを提供している。日持ちさせるために塩分濃度を上げる既製品と違い、ぎりぎりの塩加減で、卵本来の味を楽しむフレッシュキャビアだ。
足が早く新鮮なものは中々食せないという駿河湾アカエビのカルパッチョもその一例だ。
ディナーばかりではない。朝食も、ゲストを楽しませようという細かな配慮と創意にあふれている。
その料理の器は木や石が使われ、自然を邪魔しないように配慮されている。朝食プレート全体のテーマは「森の中のピクニック」。調理法と素材の組合せで20 種類から選べる卵料理や野菜をふんだんに使ったタルト、フレッシュジュース、自家燻製のロースハム、焼き立てのパンも。
朝からなんとも楽しい気持ちになり、身体と同時に心もエナジーチャージ。
さあ、今日も楽しい自転車旅の1日になりそうだ。